2018.07.31
ウィリアム・オスラー博士は私たち医師の心構えについて、すばらしい名言をたくさん残してくれています。
「医師として最も重要なことは、謙遜の徳(the grace of humility)を持つことだ」
「患者を診ずに本だけで勉強するのは、まったく航海に出ないに等しいと言えるが、半面、本を読まずに疾病の現象を学ぶのは、海図を持たずに航海するに等しい。」
「われわれがここにあるのは自分のためではなく、他の人々の人生をより幸せにするためである。・・・・・医療とはただの手仕事ではなく技術である。商売ではなく天職である。すなわち、頭と心を等しく働かさねばならない天職である。」
(「平静の心 オスラー博士講演集(医学書院)」から引用)
この中に女性医師だからできないことはあるでしょうか。そんなことはありません。ただ、医療が日進月歩で進んでいく中で、医師は絶えず研鑽を積み重ねる必要があるため、多くの女性医師にとって出産・育児は大きな転機となります。いつ出産するのか、出産後にどれくらいペースダウンするのか、など、いろいろな不安を抱えていると思います。そのようなとき、ご自身が「どう働きたいのか」「どのような体制であれば、働けるのか」「将来はどのようなキャリアアップを考えているのか」などを周囲に相談してみましょう。
出産・育児により一時的でも医療現場を離れることは避けることができませんが、現在、その後も医師として活躍し続けるために、「短時間勤務」「院内保育」「病児保育」「ベビーシッター制度」などのさまざまなサポート体制が整いつつあります。これらを利用しながら、家族、上司や同僚の理解と協力が得ることができれば、仕事量を制限しながらもキャリアを続けることが可能です。一旦現場を完全に離れた場合でも、働き方を選ぶことでご自身のペースで復帰することができます。
私の周りには、さまざまな働き方をしている女性医師の方が増えてきました。時間の制約がある中でも、プロフェッショナルとして自信をもって診療しておられる姿はとても眩しく輝いて見えます。また、出産・育児をしていない自分にとって、そのような方々から多くのこと学ばせていただいています。出産・育児のかけがえのない経験は小児に関わる診療だけでなく、患者さんとその家族に寄り添う医療を行ううえで、必ず活かすことができると思うのです。
女性に限らず、子育てが終わった後は、ご両親の介護のことを考える時期がくるかもしれません。また、ある時、ご自身の体調やご家族の病気などで、自分の働き方を見直さざるを得ないときがくるかもしれません。つまり、男女問わず働き方はひとつではなく、変わっていく可能性があるのです。どんなときも、どのような職場でも、それぞれの立場でお互いを尊敬し合い、感謝の気持ちをもつことができれば、働きやすい勤務環境を作っていけると信じています。これからの医療を支えていかれる若手の女性医師の皆様には、医師の道を選んだ時の気持ちを大切にしながら、自分を信じ、後悔しない道を歩んでいかれることを心より願っております。