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改正労働安全衛生法の早わかり

労働者の健康確保の充実を目的とした労働安全衛生法の一部を改正する法律が、平成八年六月十九日に公布されました。

改正の趣旨及び概要

職業生活における健康管理の重要牲についてはいうまでもないことですが、最近における労働者の健康をめぐる状況をみてみますと、労働力人口の高齢化を背景に、脳・心臓疾患等の成人病につながる所見を有する労働者が増加しており、一般健康診断の結果では、これらの者を含め、労働者の三人に一人が何らかの所見を有する状況にあります。

なかでも、特に中小規模の事業場において有所見者の割含が高い状況にあります。

また、産業構造の変化や技術革新の進展等に伴う労働の態様の変化により職場生活において疲労やストレスを感じる労働者が増加しているほか、「過労死」が社会的にも大きな間題となっており、その予防のため総合的な対策を講じる必要があります。

今回の法律改正は、このような状況に対応し、すべての労働者が職業生活の全期間を通じて健康で安心して働けるよう、労働者の健康の確保のための施策を図るため、中央労働基準審議会の建議を踏まえて行われたものです。

今回の法律改正では、労働衛生管理体制の充実として、労働者の健康管埋の専門スタッフとしての産業医の専門性の確保と産業医から事業者に対する勧告権の付与及び産業医の選任を要しない事業場における労働者の健康管理等に対する事業者の努力義務とこれに対する国の援助について定められています。

また、労働者の健康管理の充実として、事業者が有所見者について、健康診断の結果に基づき、労働者の健康を保持するために必要な措置について医師からの意見聴取を行うこと、事業者から労働者へ一般健康診断の結果の通知を行うこと及びこの結果の通知や事業者が必要に応じて行う医師等による保健指導を活用することにより、労働者自身も健康保持に努めることが定められております。

 

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労働安全衛生法の一部を改正する法律の概要

[背景:労働者の健康をめぐる状況]
・脳,心臓疾患等につながる所見を有する労働者の増加
・定期健康診断の結果では,3人に1人が有所見者
・仕事や職場生活で不安,悩み,ストレスを感じる労働者の割合の増加
・「過労死」が発生し,社会間題化
[法的整備の基本的方向]
すべての労働者が職業生涯を通じて,健康で安心して働くことができるよう,
①労働衛生管理体制の充実
②職場における労働者の健康管理の充実
を図るために,必要な法的整備を図ることが必要
[労働衛生管理体制の充実] [職場における労働者の健康管理の充実]

①産業医の専門性の確保(第13条第2項)
・産業医は,労働者の健康管理等に関する知識について一定の要件を備えた医師であること

②産業医の勧告等(第13条第3項,第4項)
・産業医は,労働者の健康確保のため必要があるときは,事業者に対して必要な勧告をすることができること
・事業者は,産業医の勧告を尊重しなけれぱならないこと

③産業医の選任義務のない事業場の労働者の健康管理等(第13条の2)
・事業者は,産業医の選任義務のない事業場について、労働者の健康管理等に関する知識を有する医師等に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めること

④国の援助(第19条の3)
・国は,産業医の選任義務のない事業場の労働者の健康の確保に資するため,労働者の健康管理等に関する相談等の援助に努めること

①健康診断の結果についての意見聴取(第66条の2)
・事業者は,有所見者の健康診断の結果について,医師又は歯科医師の意見を聴かなければならないこと
(注)産業医の選任される事業場においては,産業医の意見を聴くことが望ましいこと

②健康診断実施後の措置(第66条の3)
・事業者は,①の医師等の意見を聴いて必要があるときは,就業場所の変更等適切な就業上の措置を講じなけれぱならないこと
・労働大臣は,就業上の措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表し事業者等に対し必要な指導を行うことができること

③一般健康診断の桔果の通知(第66条の4)
・事業者は,労働者に対して,一般健康診断の結果について通知しなけれぱならないこと

④保健指導等(第66条の5)
・事業者は,一般健康診断の結果に基づいて必要な労働者に対して医師又は保健婦等による保健指導を行うよう努めなけれぱならないこと
・労働者は,③により通知された一般健康診断の結果及び保健指導を利用してその健康の保持に努めるものとすること

労働者の健康の確保
(注)その他所要の規定の整備を図るとともに,施行期日を平成8年10月1日とする。ただし,
「産業医の専門性の確保」については,施行後2年間猶予する。

 

 

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