医療機関の皆様へ

治験ってなに?

『治験(ちけん)』について知ってください。

私たちは、病気になったりけがをすると「くすり」を飲んだり注射したりします。そのひとつの「くすり」が誕生するまでに10年以上もの長い研究開発期間 を必要とします。さらに国から承認を受けなければ医療機関や薬局で取り扱うことができません。

国から「くすり」として承認を受けるために、さまざまな試験をくりかえし、効き目の確認と安全性の評価が行われますが、最後の段階で健康な人や患者さんのご協力を得て行われる試験を「治験」といいます。

人における試験を一般に「臨床試験」といいますが、「くすりの候補」を用いて国の承認を得るための成績を集める臨床試験が、特に「治験」と呼ばれています。耳慣れない言葉ですが、最近始まったものではなく、現代医学と共に歩み、歴史と実績のある、しっかりと確立された制度なのです。

今私たちが使っている「くすり」は、多くの患者さんのボランティアによる「治験」をへて誕生したものです。そしてこれからの新しい「くすり」もまた、「治験」から生まれ、未来へと受け継がれていきます。


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治験を行うときのルール

治験は、国際基準にのっとり厚生労働省が定めたGCP(Good Clinical Practice)という基準に従って厳格に行われます。ルールに違反した治験の実施は許されていません。主なルールとしては次のようなものがあります。

治験内容の国への届出と国による事前審査

治験を実施するために製薬会社は、どのような治験を実施するかを詳細に計画した治験実施計画書(プロトコール)をその疾患の専門家の協力により作成して厚生労働省に届出ます。届出を受け取った厚生労働省は、この治験実施計画書の内容が適切かどうかを審査しています。

治験審査委員会での審査

治験を行おうとする病院等の医療機関は、実施する治験の内容が妥当なものであるかどうかを各医療機関毎に治験審査委員会(IRB)を設けて審議しなければなりません。治験審査委員会は、医学・薬学の専門家に加え弁護士等の非専門家も入っています。

自由参加と同意の取得

治験に参加するかどうかは、参加される方の自由意思で決まります。治験に参加することを強制されることはありませんし、参加を断っても何ら不利なことはありません。

治験参加にあたっては、十分な説明を受け、その同意は文書で取ることになっていますが、一度、治験に参加することに同意しても、いつまでも、どんな理由でも参加を取りやめることができます。

このように治験の安全性と倫理性を保つために二重・三重のチェック制度が取り入れられています。


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新しいくすりが生まれるまで

基礎研究
植物や化学物質、微生物などの中から、将来くすりとなる可能性のある物質を探します
非臨床試験
マウス、ウサギなどの動物を使って安全かどうか効き目はあるのかを調べます。動物実験で効果と安全が確認されたものだけが「新しいくすりの候補」となり、人に よる臨床試験に入ります。
臨床試験/ 治 験
第1相試験(フェーズ1) 少数の健康な成人(志願者)を対象にして、主に安全性を調べます。
第2相試験(フェーズ2) 少数の患者さんを対 象に安全性と効き目を調べます
第3相試験(フェーズ3) 多くの患者さんを対 象に今まであったくすりと比べます。効果や安全性、使い方について最終的な確認をします。
承認申請・審査・承認
厚生労働省に「くす り」として認めてもらえるように申請します。治験のデータ等をもとに厳しく審査され、効果と安全性が確認されると「くすり」と認められます。
市販後調査
認を受け製造販売 され、医師や私たちが使えるようになります。多くの人が使う中で、安全性や効き目について情報を集め、さらに分析します。

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治験のメリット

いち早く新しいくすりで治療を受けられます

今までにない効果が期待されるくすりや海外で実績のあるくすりなど、新しいくすりによる治療をいち早く受けることができます。

よりきめ細やかな治療を受けられます

試験という側面があるので、通常の治療より詳しい検査や診察を行います。そのため、自分の病気の状態について詳しく知ることができます。

交通費の負担軽減費等が支払われます

通院にかかる負担を軽減する目的で、一定の範囲で、通院のための交通費等、負担軽減費が支払われます。

専門医師が一貫して診察します

治験担当医師(複数の場合もあります)が一貫して診察します。専門の治験担当医師以外が診察することはありません。

じっくりと相談ができます

治験コーディネーターが治験全般に関する質問や相談に親切に対応します。

治験は社会貢献です

病気で苦しんでいる人のため、次の世代によいくすりを残す、そういったことのために協力するという社会貢献ができます。

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治験のデメリット

治療期間や通院の回数が多くなります

くすりの効果や安全性を確認するために、一般的な治療に比べて来院回数や検査が多くなることがあります。

様々な協力をお願いすることがあります

正確な服薬や来院、病気によっては体の状態を記録することをお願いすることがあります。また治療の内容によって、運動や食事の制限をお願いすることもあります。

副作用の可能性も完全には否定できません

新しいくすりには未知の副作用が発生する可能性があります。もちろん治験では十分な安全性をもって服薬していただきますが、この可能性も完全には否定することはできません。

患者さんが希望しても、指定の病院以外受けることができません

治験は決められた病院でしか行うことができません。また安全性のために、市販のくすりを使う場合も治験担当医師に相談しなければなりません。

よくある質問・疑問より

もしかしたら、人体実験のこと?

みなさんが考えておられる「人体実験」は本人の意思を無視、あるいは確認せずに行われる「実験」のことかと思います。しかし「治験」は、「本人の自由意思」に基づいて行われる「治療試験」のことです。

確かにどちらも研究的な側面がありますが、「治験」と「人体実験」の最大の違いは、患者さんが、十分に説明を受けたうえで、本人の自由意志で試験に参加しているかどうかということです。

なお、当然のことながら、「治験」においては、安全性や倫理性に十分配慮されています。

実際にどんなことをするの?

治験では、単に「くすりの候補(治験薬)」を使って病気がなおるかどうかを見る方法もありますが、多くの場合「治験薬」と他のくすりを比較する試験を行います。

治験の内容によって次のような比較試験を行います。

●既存のくすりとの比較

既に発売されているくすりで同じ様な効き目を持つものと比較します。

●用量間での比較

同じ治験薬ですが、使う量を変えてその効き目の違いや安全性を比較します。

●プラセボとの比較

治験薬と見た目の色や形、味など区別がつかず、くすりの成分が含まれていない、プラセボと呼ばれるものを使って比較します。比較の為の適切なくすりがない場合などに採用されています。

副作用が心配なのですが?

すでに販売されているくすりでも、副作用の危険性は否定できません。治験では安全性を優先し、予測される副作用についてはあらかじめ説明をし、通常の治療よりも詳しい検査を行うので、万が一副作用があった場合にも早急に対処できます。さらに、患者さんはいつでも担当医師や治験コーディネーターなどに相談できるようになっています。

また、病院は副作用が発生した場合にはただちに適切な処置が行える体制を整えておくことになっています。

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